近代に入り宗門から解放された『正法眼蔵』は多くの現代語訳が試みられ、和辻哲郎や田辺元をはじめその魅力が論及されるようになっているが、その本来の不汚染の「宗教的なるもの」の解明を目指す。
序章 『正法眼蔵』を学ぶ人のために
第1章 伝統宗学の『正法眼蔵』解釈の批判的検討
第1節 「現成公案」巻と「一方証」の道理
1 『正法眼蔵抄』の「現成公案」理解
2 「現成公案」巻の構想
3 『正法眼蔵抄』の「一方証」解釈
4 『正法眼蔵抄』における「一方証」の運用
5 「一方証」の道理と『正法眼蔵』
第2節 『一方証の道理』についてー「大悟」巻と「仏向上事」巻の公案解釈
1 「一方証」と『一方証の道理』
2 「大悟」巻と『一方証の道理』
3 「仏向上事」巻と『一方証の道理』
4 『一方証の道理』の意味
第3節 一法究尽について(1)―『正法眼蔵』における「究尽」
1 究尽の実相としての諸法
2 諸法と自己
3 自己的な諸法と世界
4 「一方証」と「一法究尽」
第4節 一法究尽について(2)―『経豪抄』における「一法究尽」
1 「現成公案」巻における「一法究尽」
2 「仏性」巻における「一法究尽」
第2章 『正法眼蔵』における中国禅の継承とその創造的展開
第1節 道元の身心脱落
1 叱咤時脱落説の批判的検討
2 『正法眼蔵』における用例の検討
3 『宝慶記』における用例の検討
4 『如浄語録』における用例の検討
5 『永平元禅師語録』序における用例の検討
6 如浄の印可証明について
第2節 「身心脱落」と面授時脱落説
1 面授時脱落説の起源
2 面授時脱落説の問題点
3 身心脱落とは何か
4 懐奘における「身心脱落」
5 『正法眼蔵』における「身心脱落」
6 面授時脱落
第3節 道元の無情仏性論1 慧忠と道元―「他心通」巻を中心として
1 「景徳伝灯録」に見られる慧忠の思想
2 道元の「他心通」批判
3 「後心不可得」巻から「他心通」巻へ
第4節 道元の無情仏性論2
1 慧忠無情仏性論の批判的継承
2 「山水経」巻における水界
3 「全機」巻における舟
4 無情仏性論と修証
第3章 十二巻本『正法眼蔵』と七十五巻本『正法眼蔵』
第1節 「大修行」巻と「深信因果」巻
1 「大修行」巻の解釈
2 「大修行」巻と「深信因果」巻に見られる「本覚の性海」説批判
3 先尼外道説
4 「大修行」巻と「深信因果」巻における外道説批判と
先尼外道説の関係について
5 身心一如と三世両重の因果
第2節 二つの「発菩堤心」巻
1 「発無上心」巻と「発菩堤心」巻
2 七十五巻本「発菩堤心」巻の意図
3 十二巻本「発菩堤心」巻における菩堤心
4 二つの「発菩堤心」巻において変化せるものと一環せるもの
第3節 「四禅比丘」巻における「自然見」批判について
1 無情仏性論のゆくえ
2 「自然見」批判
第4章 『正法眼蔵』における時間と存在
第1節 『正法眼蔵』の時間論1
1 有と時
2 自己と有時
3 「不言我起」
4 住位の有時と前後際断
第2節 『正法眼蔵』の時間論2
1 「有時」巻の今日的諸解釈の問題点
2 「われに時あるべし」の諸解釈
3 「有時の而今」
4 「有時に経歴の功徳あり」の解釈
第3節 『正法眼蔵』の存在論―「仏性」巻における存在と聖性
1 「仏性」巻の主題
2 一切衆生悉有仏性
3 無仏性
4 無仏性と有仏性
5 獎水錢と草鞋錢
6 狗子と仏性
7 蚯蚓
8 存在と聖性
第5章 日本哲学における道元禅の受容
第1節 京都学派以前
1 日本哲学と道元
2 紀平正美の『行の哲学』
3 和辻哲郎の「沙門道元」
4 ロゴスとしての「道得」について
第2節 『正法眼蔵の哲学私観』について
1 『正法眼蔵の哲学私観』における「媒介的思想」
2 「有時」巻への関心
3 実存哲学への批判
4 「有時」巻と絶対媒介の時間論
5 『種の論理と世界図式』における「今」
6 種の論理の思想的位置
7 『哲学私観』の意図するところ
第3節 西田哲学と道元禅
1 『哲学論文集第三』「図式的説明」にみられる道元理解
2 『日本文化の問題』における皇道論
3 『日本文化の問題』における道元理解
4 「場所的論理と宗教的世界観」における「物となって」の位置づけ
5 「場所的論理と宗教的世界観」における仏教理解
6 「場所的論理と宗教的世界観」における道元引用について
7 日本哲学にとっての道元禅
第6章 現代思想と道元―比較思想の観点から
第1節 『正法眼蔵』と『存在と時間』における自己の所在について
1 『存在と時間』における「自己」と「もの」
2 『正法眼蔵』における「自己」
3 自己の所在
第2節 道元とハイデッガー―「もの」をめぐって
1 「もの」への観入
2 「もの」の真相
第3節 他と否定性―M・ブーバーと道元の比較思想的研究
1 「他」のあり方
2 「占有性」と「脱落」