「北欧神話」に表象される最深の論理と民族意識を抽出し、「北欧的精神」の原初的形態を探究。「たった一人の宗教」という理念を手がかりに、19世紀ロマン主義影響下における北欧神話の復興と、反ロマン主義思想家キェルケゴールとの関係を描く。終章では、「北欧的なもの」に関する著者のこれまでの探究の軌跡を紹介し、なかんずく宗教批判・医療倫理・環境思想の領域における「北欧的ヒューマニズム」の可能性を提示する。
序 章 「北欧学」の構想-北欧神話から北欧学へ
はじめに 「北欧学」への私的動機
1「北欧学」の基礎概念としての「北欧的なもの」
2 北欧神話における「北欧的なもの」
3 19世紀北欧精神史における「北欧的なもの」
(1)「北欧的なもの」としての「北欧民族精神」
(2)ローセンベーャにおける「北欧的なもの」の現象形態
4 現代北欧文化史における「北欧的なもの」
(1)文化の枠組みの表現としての「北欧的なもの」
(2)現代北欧文化史の方法論と「北欧的なもの」の現象
5 北欧の神話・精神史・文化史における「北欧的なもの」の再吟味と「北欧学」成立基盤の確認
第1章 北欧神話の世界観-G・V・リュングの所論に負いつつ
はじめに 本章における北欧神話解読の方法
1 北欧神話の輪郭構造
2 北欧神話・世界観の基本的前提と構成原理
(1)北欧的人生観の特質
(2)北欧神話・世界観の構成原理-自然と精神の相克
3 北欧神話・世界観の展開
(1)北欧神話・世界創成論の秘儀-「ラグナロク」への前奏
原罪的行為としての創成/神々の堕落と人間の創成
(2)北欧神話・世界形態論の様相-「ラグナロク」の前現象
ウルズの泉とミーミルの泉/アース神族とヴァン神族/アース神の城塞の再建/バルドル神話の秘密/神族と巨人族の戦い〈1〉-無精神性の問題/神族と巨人族の戦い〈2〉-悪の問題
(3)北欧神話・異教的終末論・ラグナロク神話-破滅と再生
神々の運命と世界破滅の様相/世界復活の様相/「復活」の根源的意味-新たな宗教の創設へ
第2章 北欧神話の中心問題-黄金時代・ラグナロク神話・改宗
はじめに
1「黄金時代」のイメージ
(1)「黄金時代」の基本的意味
(2)「イザヴォル」
(3)「神々の活動」
(4)「祭壇と神殿の建立」
(5)「黄金の駒」と「盤戯」
2 「ラグナロク神話」の図像表現
(1)「ラグナロク神話」の意味
(2) 岩盤刻画と絵画石碑
(3)「ゴスフォースの十字架石碑」に見る「ラグナロク神話」像
異教的それともキリスト教的?-W・カルヴァーリとR・ライツェンシュタイン/「ゴスフォースの十字架」の図像解析の視点/「ゴスフォースの十字架」の図像解析
(4)最近の図像解析の結果について
3 北欧人における「改宗」の真相
(1)「改宗」の比較思想的意味
(2)「改宗」の外的経過
(3)北欧人の「改宗」の特質
第3章 ゲルマン初期王権の問題-北欧神話との接点
1 ゲルマン初期王権論の諸相
(1)ゲルマンの連続性
(2)「聖なる王権」
(3)問題考察の視点
(4)問題考察の方法論
2 ゲルマン初期王権の神話的基礎
(1)『ゲルマ-ニア』の提起する問題
(2)神聖王権の可能性
(3)王権の神的起源
第4章 19世紀北欧思想と北欧神話
はじめに
1 北欧ロマン主義と北欧神話
(1)北欧ロマン主義における北欧神話の役割
(2)ロマン主義とハイベーャ・アンデルセン・キェルケゴール
(3)「グルントヴィvs.キェルケゴール」をめぐる三つの見解
2 北欧民族精神をめぐるキェルケゴールとグルントヴィ
-O.P.モンラーズの『セーレン・キェルケゴール』の投じる問題
(1)モンラーズにおける北欧民族精神理解の前提-セーデルブロームとカーライル
(2)モンラーズにおける北欧神話とグルントヴィ及びキェルケゴールの接点
(3)北欧的「人格性」概念のさらなる内包と外延
(4)特にキェルケゴールにおける「北欧的なもの」
第5章 北欧神話・グルントヴィ・キェルケゴール
1 グルントヴィと北欧神話-グルントヴィの北欧的発展
(1)「宗教的危機」(1810-11年) 以前のグルントヴィと北欧民族精神
(2)「宗教的危機」以後のグルントヴィと北欧民族精神
(3)北欧の「戦いの精神」
2 キェルケゴールの神話理解
(1)キェルケゴールと「神話」一般
(2)日誌記述におけるキェルケゴールの神話概念
(3)『イロニーの概念について』におけるキェルケゴールの神話概念
3 キェルケゴールと北欧神話
(1)日誌記述に見るキェルケゴールと北欧神話の関係-非連続性?
(2)北欧神話とキェルケゴールを繋ぐもの-「原罪意識」
(3)『巫女の予言』の詩人とキェルケゴール-「ただ一人の宗教」
『巫女の予言』第55節の問題-「大いなる者・強き者・すべてを統べる者」/
キェルケゴール「教会闘争」の目指すもの-「新約聖書のキリスト教」による破壊と再生
終 章 わたしの「北欧学」の構成 -「北欧的ヒューマニズム」の探究
(1)北欧思想史の試み-デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド
「スカンディナヴィア哲学思想の諸傾向」ヨハンネス・スレーク『実存主義』への訳者付論
(2)福祉論・信仰論-デンマーク
『北欧思想の水脈 単独者・福祉・信仰-知論争』
(3)北ゲルマン異教宗教のコスモロジー-アイスランド・ノルウェー
『北欧神話・宇宙論の基礎構造-〈巫女の予言〉の秘文を解く』
(4)宗教の徹底批判としての宗教哲学-スウェーデン
『スウェーデン・ウプサラ学派の宗教哲学-絶対観念論から価値ニヒリスムへ』
(5)医療倫理の窮境-スウェーデン他
『生と死 極限の医療倫理学-スウェーデンにおける安楽死問題をめぐって』
(6)環境思想の北欧的特性-ノルウェー
『ディープ・エコロジーの原郷-ノルウェーの環境思想』